
社会科の実践発表では,旭川市立近文小の松田先生による提案を通して、子供が主体的に学び、概念的知識を獲得していくための具体的な方法が示されました。ENP代表理事の齊藤先生には、社会科の本質や概念的知識とは何か、学習プロセスの進化について深く掘り下げた御指導をいただき、今後の社会科における学びを考える上で大変有意義な時間となりました。
授業実践 4年社会「残したいもの 伝えたいもの」
旭川市立近文小学校 松田 隆之
松田先生は,社会科の授業で起こりがちな教師の一方的な説明や暗記中心の学習からの脱却を目指し,社会的事象への理解とよりよい社会や人生に向かう豊かな人を育てる社会科の学びづくりについて提案されました。
松田先生が示したWhy、What、Howは、右の通りです。
具体的な授業展開として、9つの文化財を提示し、共通点を見いだすことから学習問題を立て、予想に基づいた学習計画を立てました。概念的知識の獲得のために「思考の伴う調べ学習」を位置付けたこと、複線化によって事実追究と意味追究を進めることなどが単元デザインにおけるポイントとして示されました。文化財は「アイヌ古式舞踊」「旭川市彫刻美術館」「旭川冬まつり」を取り上げ、実際の児童のワークシートや授業動画を基に、つなぎ言葉(「つまり」「すると」「もし,なかったら」)を通して児童が解釈を深めていった様子を示しました。一方で,事実の羅列に終始してしまった児童の事例も挙げ、教師の働きかけの重要性を指摘しました。
質疑応答では,「豊かさ」という言葉を子どもと共有したのか、教科書・副読本をどう扱っているのか、事実的知識を指導するタイミング、調べ学習における教師の見取りとフィードバックといった話題についての議論を通して、学びを深めました。
ENP代表理事 齊藤一弥先生の御指
齊藤先生は,社会科の本質は歴史的事象そのものを扱うだけでなく、時代を創造する力を育てることにあると指摘されました。そのためには、学び手の主体性が重要であり、人々の願いや思い、努力や工夫,生き様や声等を通して、事象を支える背景や価値を確認していくことが重要だと御指導いただきました。
協議でも話題になった「概念的知識」については、断片的知識との対比で説明され、子供が自分の中でつながりをもって語ることのできる知識であると述べられました。概念的知識は「生きて働く知識」「駆動する知識」といった説明がされています。
また、多角的な考察(様々な立場の視点)と多面的な考察(様々な視点からの事象の見方)を通して、理由付けに基づいた選択・判断ができるようにする必要性を強調されました。事実(事象)と結論を結びつける際には「理由付け」が重要であることをトゥールミンモデル(三角ロジック)を用いて説明され、そのためには多角的・多面的な考察が必要であることを御指導いただきました。
さらに、問題解決のプロセス(理解型→説明型→解決型→意志決定型→社会参画→社会再生)についても解説していただき、無責任に語らないこと、大人と同型の文脈で考えさせることで、オーセンティックな学びの実現につながることを御指導いただきました。