
単位で繋ぐ小数と分数の指導~第3学年~
坂田 愛
実践者の問題意識と協議
教科書では、同じ有理数の表記法でありながら、分数・小数が別々の単元で組まれているという問題意識から「単位の考え方を意識した指導で単元をつなぐことで、端数を表す数として同じでありながら、それぞれの違い=良さに気付き、数の見方・考え方が深まっていくのではないか。」と考えるに至った。この主張を基に協議が行われた。
協議では、「単位の考え方とは何か。」「小数と分数を単元として貫くメリットは何か」を中心に質疑応答された。
齊藤一弥先生からのご指導
①なぜ分数と小数をつなぐのか。
“つなぐ”のは、自走する子どもたちにするため。分数も小数も有理数の表現形式であるため、共通性を見出しやすかったはずだった。しかし、一時は数としては同じであるはずなのに別の数として捉えられるようになっていた。そもそも、平成10年指導要領以前は分数と小数を1つの単元として扱っていたにも関わらず。
②なぜ有理数の現形式をつなぐと子どもたちが自走するのだろう。
それは、分数と小数の性質にある。方法の視点から見ると、計算を支える知識が、小数と分数を同時に行うと相互的な関係があることに気付く。例えば、4年生の割り算の計算。0.6÷3と3/5÷3について考えてみる。両方ともに、基準となる数のいくつ分(0.1の6つ分、1/5の3つ分)で表せることで整数として計算できる(0.1×6÷3、1/5×3÷3)。ここで同じではないかという統合が起こり、創造的な学びを生み出すことができる。 内容の視点から見ると、3つの側面が見えてくる。それは、①同じ数とみること、②計算の決まりを活用すること、③単位の考えを重視することである。すべてにおいて、両者の比較活動は、類推して“同じようにできないか”と数学的に推論する姿を促すことができる。
③総じて何をさせたいのか。
「この話は、3年生だけで片づけては全く意味がない。今後へのビジョンがないとダメなんだよ。」と始まったご指導。具体的に言えば、1.25や5/4や10/8は4年生に位置付けられているが、数の相対的大きさの指導は3年生でもやっておきたいとのご指導があった。
有理数の表現形式をつなぐことは、分数と小数とを入り口にして幅広く思考させることができるとても良い機会なのである。2つをつなぐことで、概念的知識(生きて働く知識・駆動する知識)を身に付けることができる。また、事実的な知識(0.6とは?3/5とは?)を概念的な知識(単位のいくつ分)として見方・考え方(有理数の表現)を獲得していくことができる。この学びのプロセスを十分に経験させ、意識した実践者がいる教室にこそ、数学的な算数授業がある。