数学的に表現し伝え合うことを通して、数学的に価値ある問いを問う子を育む
田渕 幸司 先生

主張
【豊かな人間性の構築を図る協働的な学びとは】
豊かな人間性の構築を図る協働的な学びの在り方について、提案者である田渕幸司先生は以下の様にまとめられた。
算数科における 「①人間性の構築」と「②協働的な学び」とはそれぞれ、
①算数科で育むことが期待される人間性の豊かさ
よりよい数学を創り出していこうと問い続ける姿勢であり、思考や行為を改善し続ける姿勢。
②算数科における協働的な学び
よりよい数学を創り出すための数学的なコミュニケーション、すなわち数学的に表現し伝え合うこと。
討議会にて
豊かな人間性の構築を図る協働的な学びを実現することで、児童の何を育てていくことができるのであろうか。数学的に表現し伝え合う活動を通して、「数学的に価値ある問い」を問う習慣、問い続ける態度を育むことができるのではないかというご主張は確かなものであると協議の上、結論付けた。
齊藤一弥先生からのご指導
~豊かな人間性と協働的な学びの関係~
豊かな人間性(学びに向かう人間性)を培う土台として、協働的な学び(他者との協働)がある。では、他者との協働・数学的なコミュニケーションは何のためにあるのか。数学の価値を知る、数学を学ぶ意義を知るためにある。つまり、数学的な見方・考え方を知るためにある。学びに向かう人間性を培っていくために、必要なものとは何であろうか。それは、「他者との協働」「数学的コミュニケーション」を土台として、よりよく問題を解決していきたいという「自律性」「調整力」を働かせ、「活動を動かす好奇心」となる“楽しさ”と「持続性」「方向性」となる“よさ”に気づいていくことである。
~ “楽しさ” や“よさ”を感じるとは?~
学習指導要領にも明記されている“楽しさ”。これは数学的な活動の楽しさでなければならない。では、どうしたら数学的活動の楽しさとなるのであろうか。そもそも“楽しさ”とは、意欲を喚起するものであり、好意的な態度を支えるものである。それは活動性に富むもの、本性に根ざすことが加わることで数学的な活動の楽しさとなる。
“よさ”に気づく、“よさ”を感じるとは、数学の価値を知ることであり、数学を学ぶ意義を知ることである。つまり、数学的な見方・考え方を知ることである。それには、“律”(規範)が必要となる。
数学的な活動の“よさとは、有用性、正確性、簡潔性、一般性、省力化、効率化など数学を創り出したり、探究し続ける原動力となったりするものである。
~図で表現することとは?~
言語で解釈を行うことによって解釈が多様になる。多様になるということは、ズレが生じる。まして1年生であれば、そのズレはより大きいものとなる。図で表現することによってズレが生じにくい。更に、図で表現することで思考の可視化ができる。可視化されることによって、他者との対話的な学びに有益となる。児童自身が気づいたよさについて協働し、数学的コミュニケーションを図ることで数学を学ぶ意義を感じさせたい。また、気づきをストックさせていきたい。
今回の提案である1年生の「たしざん・ひきざん」で扱った図であれば、図は同じに見えても図の解釈次第でかわると気づいた児童に寄り添いたい。求大(6+3)と、求差(9―6)までは気づいていた児童もいたが、求小(9-3)まで扱うことで2年生「加減の相互関係」で扱う6+3(9-3、9-6)といったもっと大切なことまで学ぶことにつながっていく。