旭川グループ学習会 5年算数「割合」振り返り
授業実践 5年算数「割合」
北海道教育大学附属旭川小学校 櫻井 里佳
提案
- 従来の割合の学習において、「基準量とは何か」「問題文に出てきた順番で立式しよう」といった児童の姿が多く見られたことに問題意識をもち、その授業改善に取り組んだ。
- 単元の導入では、単位量あたりの考え方を活用し、基準量に着目する導入とした。
- 単元の中盤では、基準量の違いによって割合が変わることを確認し、「1と見ているものが違うから割合が変わる」という結論を導き出した。また、個別学習において100%を超える割合や比較量を求める問題に挑戦し、問題構造の分析を通して、基準量を求める問題について予想する姿を引き出した。
- 単元の終盤では、500円引き券と20%引き券のどちらを選択すべきなのかという問題に取り組んだ。基準量をあえて提示せず、児童が自由に設定することで、様々な視点から考察を深めた。20%引きが基の80%であることを理解したり、割引額の境界線(2500円)に気付いたりする児童の姿を引き出した。
協議
- 「何を1とみるか」という視点が授業に与えた影響や、単位量あたりの大きさと割合の関係性について議論が交わされた。
- 実生活との繋がりや、「1とみる」ことに固執しすぎることの弊害、割合を学習する本来の目的(比較)に立ち返るべきという話題になった。
- 単位量の捉え方が割合を通してどのように変化していくのか、基準の構造に着目することの重要性などが議論となった。
ENP代表理事 齊藤一弥先生の御指導
- 割合は、「変化と関係」領域に含まれており、割合は後者の「関係」に属し、基準量が異なる状況下での比較を可能にする概念である。この「関係概念」を支える「概念的知識」の形成が重要であり、場面が変わっても応用できる汎用性が求められる。
- 学習対象については、「1とは何か」の積み上げであり、割合の単元だけではなく、過去の学習との繋がりを意識したカリキュラムが必要である。2年生の分数における「倍」や「等分」の概念、3年生 の割り算における「等分除」と「包含除」の概念は、単位量あたりの大きさと割合の概念に繋がる。これらの概念を丁寧に扱うことで、割合の素地を養うことができる。4年生で簡単な割合を扱い、5年生で本格的な割合の学習に入ることで、「1を自分で決める」経験を積み重ね、割合の概念をより深く理解していく。
- 第8時は、単なる価格比較に終始していた。割合の比較という視点から再構成することを提案する。500円引きと20%引きの比較を、差が一定の場合と商が一定の場合に分け、それぞれの変化を数直線で可視化すること。これにより、基準量の違いが比較に与える影響を視覚的に捉え、最終的には基準量、比較量、割合の三つの量の関係として言語化できるようになる。重要なのは、異なる状況でも「1」という基準が変わらないことを子供たちが認識すること。可視化(図的表現)とそれに基づく言語化を通して、割合の概念的な理解を深めることが重要である。