『大きい数の筆算を考えよう』を振り返って(豊中)

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6月16日 数学的な授業を創る会(豊中)レポート

 狭義の「計算力」と広義の「計算の力」

計算が生きて働くためには、「計算の対象や計算の仕組みについての理解」「具体的な場面において数量の関係を的確に把握し、演算決定できること」「基の場面にあてはめて結果を解釈すること」「計算を生み出した動機」の4つの要素が大切であり、今回の提案ではその内、「計算の対象や計算の仕組みについての理解」「計算を生み出した動機」に焦点を当てたものであった。これは、狭義の計算力である計算技能だけでなく、ものごとを発展的、創造的に考え、処理する力や、よりよいものに価値を置き、それらを求め続けてやまない精神という広義の計算の力に目を向けてのことである。
しかし、4つの要素はそれぞれ個別に抜き出すというものではなく、一連のプロセスであることを齊藤先生のご助言の中で明らかになった。①計算の必然(計算の有用さの実感)②計算の理解(計算の仕組みの理解)③演算決定(具体的な場面で確認)④結果の検証(結果を基の場面にあてはめて解釈)という一連のプロセスがあるのだと分かった。

計算の力をより広く捉えて指導を再考する

日常的に使う「計算高い」という言葉は、多くの場合、狭義である「計算技能」を指していないだろう。計算高いとは、状況を分析し、解釈・判断を経て一応の結論を出し、そのプロセスの妥当性の高さを言うのではないだろうか。計算の力をそこまで広く捉え直したとき、計算処理のプロセスとは、予測(何算?答えはどのくらい?)⇒推論(類推)⇒実行⇒省察・検証だといえる。この計算のプロセスを子どもたちが自走できるような指導ができているのか。今回の学習会の中で、最も参加者の心に刺さった問いかけではないだろうか。
そして、その視点は子どもの誤答をどう捉えるかにも関わってくる。誤答があれば、技能の不定着だと解釈してしまいがちであるが、プロセスを自走できていない計算の力の未定着だと解釈することもできる。技能の不定着にしか目がいかない場合、指導は手続き的知識を教え直すのみになるが、計算の力の未定着に目を向けることで指導の幅は広がる。例えば、4-0.3を横式と縦式で提示することで誤答の様相が変わってくる。縦式の場合、位を揃えている分、「0.1」と誤答する割合は半減するが、逆に、「4.3」と誤答する割合が倍増する。しかし、これを「4mから0.3mを取り除く」という具体があると見積り(見当)が生まれ、「3.7」という正答にたどり着きやすくなる。計算の力とは何か、そしてそれを育てる指導とは何かを学べる会となった。